~子どもの育ちを大きく変えた、たて割り保育への転換~
50年間行っていたよこ割り保育を、たて割りに転換したのは、1998年のこと。
よりよいクラスづくりを模索し、様々な特色の幼稚園の見学を繰り返す中で、たて割保育で育つ子供の「人とかかわる力」の高さを目の当たりにしたことがきっかけとなっています。
たて割保育を始めて20年以上が経ちましたが、子どもたちの育ちの変化として実感が大きかったのは
・人とかかわる力
・自信、自己肯定感
・挑戦する力
の向上です。
日本の公教育はよこ割りが基本となっていますが、社会はそもそも様々な年齢、能力、価値観の人間が混在することが自然であり、同年齢だけの社会など存在しません。
多感な幼少期から、より自然に近い環境の中に身を置くことで、「互いが支えあい、よりよく生きていく力」を十分に育ててほしいと考えています。
よくある質問
Q1.どんな子どもに向いていますか?
どんな子どもも、人との関わり合いなしに生きていくことはできません。
人と関わる力はどんな子にも等しく育てていく必要があり、向き不向きではないと考えています。
ただ、個人、タイプによって伸びる力に強弱はあると感じます。
例えば、生まれ月が遅い子、引っ込み思案な子などは、よこ割りではどうしても「相対的に」できないことも多く、リードされる側になりがちなことから、自信を持ちにくい傾向がみられます。
しかし、たて割りでは、グループ活動で自分がリーダーとなり責任をもつ経験、下の学年から頼られ、慕われる経験を通じて、自己肯定感が大きく育つケースが多く見られました。
また、生まれ月が早い子や、発達が早い子は、ともすれば「できる」ことに慢心してしまうことがありますが、たて割りで上の学年と密接に関わることで世界が広がり、「憧れ」や「挑戦する心」がより大きく育つケースが多く見られました。
Q2.年長と年少が一緒のプログラムを行ったら、年長の発達が遅れませんか?
異年齢が同じカリキュラムをこなす場合も、各々の発達に見合った課題設定を行っています。
例えば、調理活動では、年長は火起こし、竈づくりから行いますが、年少はやわらかい野菜を切り、年中は固い野菜を切る、といったように、グループの中で役割を分けて行います。上の学年には、自分の役割を果たすほかに、グループ活動を円滑に回していく役割を担うなど、一緒に行うからこそ育つ力もあります。
また、カリキュラムの狙いによっては、学年別の活動も設けており、たて割りによって、なんらかの遅れが生じているということは感じていません。
Q3.異年齢合同でクラスがまとまらないということはありませんか?
これまでまとまらないと感じたことはありません。逆に、クラス内で子供たち同士が育ちあっているため、お互いに助け合う姿が見られます。
自分が年上の子にお世話をしてもらっていた経験から、自分より年下の子がクラスに入ってきたときは、進んでお世話をする子が多いです。そして、お世話をしてもらって嬉しかった経験が、次に自分がお世話をしてあげる立場になり、また誰かのお世話をしてあげる…。そうやって良い循環ができています。
教員は、個々の発達を把握して、そんな子供たちの育ちあいを日々見守っています。
Q4.上の学年に面倒をみてもらうことで、自主性の発達が遅れませんか?
自主性の発達が遅れると感じたことはありません。当園が、過去に横割り保育をおこなっていた頃と比べても、発達が遅れると感じたことはないです。
上の学年の子が、同じクラスの身近な場所にいることで、かえって「自分でできるってカッコいい」→「自分もやってみたい」→「自分でやりたい」という育ちに繋がっています。身近に何でもできるお兄さん、お姉さんがいることは、こんなにも子供を育てるのだという驚きでもありました。
年度初めは、上の学年がはりきってお世話をしすぎてしまうという場面もあります。そういった時は、教員が手伝いすぎないよう声かけをし、「自分でやる」ことを待つことの大切さも教えています。